隣のお犬様

引越しの日、荷物を搬入するために初めて家のドアを開けるときに、
何が一番印象に残ったかというと、それは隣の犬の鳴き声。

「うーー。わんわん。」と明らかに不審者に対しての吠え方を
激しく実践していた。


そのときの印象は、
「彼も真面目に仕事をしているのだな。
 飼い主に忠実な犬だなー。
 ちょっとうるさいけどね。」
というような感じで、決してネガティブなものではなかった。
そして、そのうち、その犬も僕に慣れるだろうと期待していた。


しかし、引っ越してきてから今日で約2週間が経ったが、
相変わらず、僕に対して不審者に対しての吠え方をしてくれる。
夜帰宅して、彼に激しく吠えられながら家の鍵をがちゃがちゃと
開けていると、なんだか泥棒をしているような気になってしまう。


しかも、僕が家の中に入った後も、音を立て彼に気配をさとられると、
また激しく吠えられてしまう。彼に吠えられないようにするには、
静かに静かに過ごすしかないのだ。
くつろいで過ごしたい家の中で、
隣のお犬様に気を使わなくてはならないのは多少、気がめいる。


先ほど、風呂に入っていると、また犬に吠えられてしまった。
特になにも悪いことはしていない。入浴中に肩にお湯をかける
音を立てるだけで、彼からチェックの「吠え」が入るのだ。
特に風呂場はお犬様のいる場所に近いので、彼には特に気になるのだろう。


こちらが、一番リラックスしたい、湯の中でお犬様に気を使うのも
馬鹿らしいと思ったので、彼に低い声で吠え返してやった。
こんな感じである。


隣の犬   :「うー。わん。わん」
風呂場の人間:「ばう。ばう。」
隣の犬   :「わん。わん。わん。」
風呂場の人間:「ぶわん」
隣の犬   :「わん。 うーーー。わんわんわん。うー。」
風呂場の人間:「ばうばう。ばうっ!」

  
     ----- 以下10回ほど同様なやり取りの繰り返し ----


そして新たな展開があった。


3軒隣の犬 :「わおーん。わん。わん」
隣の犬   :「わん。わん。わん。」
風呂場の人間:「ばう。」
3軒隣の犬 :「わおーん。わん。わん」
隣の犬   :「わん。わん。わん。」
風呂場の人間:「ばう。」
3軒隣の犬 :「わおーん。わん。わん」
隣の犬   :「わん。わん。わん。」
風呂場の人間:「ばう。」


     ----- 以下10回ほど同様なやり取りの繰り返し ----


そしてまた新たな展開があった。


隣の家のおばさん:「ほら、タロウ、どうしたの?うるさいよ。」
3軒隣の犬 :「わおーん。わん。わん」
隣の犬   :「わん。わん。わん。」
風呂場の人間:「-----。」
3軒隣の犬 :「わおーん。わん。わん」
隣の犬   :「わん。わん。わん。」
風呂場の人間:「-----。」
3軒隣の犬 :「わおーん。わん。わん」
隣の犬   :「わん。わん。わん。」
風呂場の人間:「-----。」


ちょっと、あせったぜ!!