アンパンマンの歌

震災直後に、ラジオからアンパンマンの曲が流れてきた。
それは被災地に向けた東京FMの番組だった。
最初は何気なく聴いていたのだが、途中ドキリとした。
明らかに、「死」ということを強く意識した歌詞が出てきたからだ。
「えっ!」と思って、ラジオに耳を向け始めたのは、
多分、次の歌詞のあたりから。


時ははやくすぎる
光る星は消える
だから君はいくんだ
ほほえんで


そうだうれしいんだ
生きるよろこび
たとえどんな敵があいてでも


子供向けの歌のはずなのに、明らかに、「君たちもいつか死ぬんだよ」
というメッセージを込めている。
曲をフルコーラス聴いてはじめてそれに気かついて驚いた。
そして改めて歌詞全体を調べてみて、実にいい詩だと思った。


僕が特にすごいと思ったのは、歌の一番はじめに、
「そうだ、嬉しんだ、生きる喜び」というフレーズを持ってきているところ。

歌のはじめに一人称で、いきなり、「そうだ嬉しいんだ」という
個人的な叫びみたいな言葉を持ってきているのが、
歌を作る人が非凡であることを感じさせた。
普通は、なかなか、真っ先にそういう言葉を選ぶことはできないと思う。
そして、歌全体を眺めると、その言葉が全体を通じたメッセージになっていると思う。
いい詩だな。


だまされたと思って、一度フルコーラスで味わってください。
http://www.youtube.com/watch?v=BUGh-7Y5kZA


ちなみに、この詩を書いたのは「手のひらに太陽を」という
有名な曲の作詞もしている「やなせたかし氏」であり、
まさにアンパンマンの作者その人なのだ。
尊敬する人が一人増えた。