影の現象学

文化庁の長官を務めた河合隼雄氏が脳梗塞で入院したという
ニュースを耳にしてからもう一ヶ月が過ぎてしまった。
まだ回復しないのだろうか?


河合隼雄の本の中で一番のお勧めは「影の現象学」です。
この本は読書家の友人に無理やり貸され、半ば強制的に読まされました。
心理学というものに無知だったので、あまり期待しないでいたが、
実際には寝る時間を惜しんで読んでしまった。
今となっては、学生時代に読んだ本の中で一番印象に残っている本です。


読んでいる途中はともかく怖かった。
背筋がゾクゾクするような恐怖感を覚えた。
それはきっと、その本を通して、人間の心の中の無意識と呼ばれる部分には
普段は抑制されているドロドロとした黒いエネルギーが渦巻いていることが
とてもリアルに感じられたからだと思う。


この本はいわゆる教科書ではないが、様々な症例を題材にしている。
そして心理学上の「影」という概念に絞って深い議論がなされている。
このため人間の心のより本質的な部分に触れられた気がする。
巷に溢れている「心理学」という言葉が入った本を10冊読むより、
これを読んだ方が本質的な理解が進むことが期待でき有益だと思う。


僕はこの本の魅せられてその後「河合隼雄」の本を20冊程度は読んだ。
しかし、「影の現象学」ほど作者の熱意を感じた本はない。
この本は名著の分類に入ると思う。お勧めである。


影の現象学 (講談社学術文庫)